曲 弦・打楽器・チェレスタのための音楽
作曲者 ベラ・バルトーク
演奏 小澤征爾 指揮 桐朋学園オーケストラ
会場 郵便貯金ホール(当時)
年代 1980年か81年
バルトークについては、言いたいことが山ほどある。かつて私のアイドルでした。高校のころ、翻訳書をみつけられなくて、ペリカンで、Last American Years という、晩年アメリカに亡命してからの日々を綴った伝記を、原書で読んだぐらい。
この演奏会は、大学オケの仲間のオーボエ吹きに誘われて行った。とても暖かい、いいオーボエを吹く人だった。三善晃さんについて作曲を習っている、いってみれば、当時すでにセミプロのような人。いま、どうしているだろうか。
桐朋のオケを学生オーケストラと思って、ばかにしてはいけない。弦がソロのように聞える。弦楽合奏の技術については、プロを含めて、トップではないか。水戸室内とかは聞いたことがないからわからないが。
これが、凄い演奏だった。
第一楽章の、らせん状に盛り上がる弦の最後まで途切れない刃物のような緊張感。
第二楽章でチェレスタ登場。リズム!
そのまま、フィナーレまで、突っ走りました。
この曲を聞くといつも、なにか、胸騒ぎのような、これからなにか、とてつもないことが始まるような、カタストロフにまっしぐら、というような、不思議な気分になります。
20世紀初頭の東ヨーロッパというのは、こんな感じだったのかなあ、と。
歴史では、ヒットラーが、オーストリア・ハンガリーに攻めていって、という事実があるので、実際にその後わが国をはじめ世界をまきこむたいへんな事が起き・・・と、私のイメージと史実は符合するのですが、そんな図式的なことでなく、妖しいなにかを感じます。
それと、刃物のような緊張感。なにかが起こるのではないか、という兆し。
これが、この曲の身上だと思う、個人的ですが。
およそ、この曲を聴いて、それがダイレクトに伝わってきたのは、ライブでは、この演奏だけです、未だに。
バルトークは、音楽界の長嶋茂雄だと思う。野生の勘。
小澤、でかした。
実は、小澤を聞いて感動したのは、今に至るまで、このときだけなのですが。
1982年、パリのオペラ座で、この人のトスカを聞きました。パリでは、えらい人気で、カーテンコールでも、一番拍手が多かったのではないかしら。私は、どうかな、という感じでしたね。
脱線。
バルトークと小澤を両方いっぺんに俎上にあげるのは、無理だ、ビール飲んじゃったし。
というわけで、私のバルトーク体験。
あと、思い出した、1977年か78年、都市センターホールで、バルトーク四重奏団の6曲全曲演奏会(2日にわけて)に行って、これもドスーンと来たのだった。
バルトークで、一曲というか、1シリーズといえば、弦楽四重奏曲全6曲を迷わず挙げる。偏愛するのは、私は3番です、4番、5番という人が多いだろうけど。
きりがない。またこんどにしよう。
最後に。
その友人は、コネがあって、リハーサルから見ていたそうな。小澤は、ひたすら、打楽器のトレーニングに時間を費やしていた、らしい。