啓発舎

マジすか? マジすよ

箱根の収穫

強羅の宿で、間近に鶯と遭遇した。
といっても、声が聞こえるばかりで姿は見えず。
角部屋でベランダがあり、広い庭に面している。声の主は、その庭樹のどれかにいるようだ。
うぐいすのさえずりをこれほど間近で聞くのは初めてだ。
声が聞こえたとき奥の和室にいたので、驚かさないように、当方も、仄暗い和室で、しばしつきあう。
しばらく聞いていると、気がつくことがある。
字にすると、まさに、ほー、ほけきょ、となくのだが、微妙に異なるときがある。
基本形は、ほー、ほけきょ、だ。長くのばす「ほー」のあとに、「ほ」「け」「きょ」という明確に三つにわかれるアクセントがある。
ところが、「ほー」続いて「ほ」まではよいのだが、そのあとの「け」と「きょ」のアクセントが分離せず、「きゃー」というように発声するときがある。「ほー」「ほ」「きゃー」、ね。アクセント二回。クラリネットがひっくりかえるキャッ、キャッという音に似ている。これがどうだろう三回に一回ぐらい。
そうかとおもうと、「ほ」「け」のあとにもういちど「け」音が加わり、「ほ」「け」「け」「きょ」と四音に分かれることもある。この場合、二番目の「け」の音程が一番高い。これが、どうだろう五回に二回ぐらいか。
のこりが、基本形。
音色は、基本形が一番美しい。
だんだん聞いているうちに、「ほー」と伸ばしたあと、さあ今回はどうか、と当方の意識も集中する。
うぐいす氏も、根気よく、何回も繰り返してくれる。
「ほー」のあとの、タメ、これが肝だ。間、があり、やおら「ほけきょ」。
これを超える美しい音楽は、いま、ちょっと思いつかない。

あと、けきょけきょけきょとあとに続くフレーズだが、今回の鶯氏は、これを独立して演奏する。
即ち、「ほーほけきょ」を何回か繰り返した後、あ、そうだった、と思いだしたように、十分間をおいて「けきょけきょ」と、やる。

新緑は肚にしみた。