起きると10時。かすかに前の晩の酒がのこっている。
ベランダにでると、雨。空気がおいしい。
どうしても、きのうの松林に思いは向かう。
絵が空間を支配する。
一枚の屏風が、そこに描かれている樹だの霧だのを離れ、空間を表現してしまう。大気を顕す。
時空の混沌そのものを表現してしまっている。
清冽な大気の匂い、そのひんやりとした肌触り、混じり気のない味わい、音が、ない、という無音の響き、□、じゃない、視覚がとらえるのは、ものではなく、空。
五感のすべてに働きかける。
他の部屋をめぐって、またこの屏風の前にもどるたび、体の芯がゆるむような感覚が甦る。
実は、同行者であるところの酒乱T氏もそれは感じていて、そこだけ別の空気だった、と、あとで飲み屋で盛んに言っていた。
あと、真珠庵の襖二幅がよかったようで、この人は、等伯さんと結構相性がいいのかもしれない。
とまれ、俗人二人組をここまで、なんというんだろう、放りこむ、この屏風の力はつよい。
と、きのうの印象を、コーヒー2杯ですこし醒めたなかでひっぱりだすのは、いやはやなんとも。
淫するよろこび。
今日は、晩に中華のフルコースがまってるから、体調を整えなければいけない。
フカヒレ姿煮、あわび、の連打があるらしい。