啓発舎

マジすか? マジすよ

鈴本の昼席。
ついでに上野の花を、という趣向もあったのだが、その気がおきず、広小路からすぐ地下鉄にのる。

落     語 柳  亭 市    童
太神楽曲芸  鏡 味 仙三郎社中
落     語  柳  家 小 も ん
落     語  入船亭 扇    遊
も の ま ね   江戸家 小    猫
落     語  金原亭 馬    生
落     語  古今亭 菊 之 丞
浮  世  節  立花家 橘 之 助
落     語  三遊亭 歌 之 介
漫     才  ホ ー ム  ラ  ン
落     語    桂   文    楽
落     語  春風亭 一 之 輔
紙  切  り   林  家 楽    一
落     語  柳  亭 市    馬

毎回同じ感想になるが、いや、みんなうまいものだ。
今回は、特に、市馬師匠の厩火事をみっちり聞いて、両肩にずっしりのっけられたかんじで席を立ちました。


すこし、考えた。
一之輔と市馬師匠に登場いただいて整理したい。
一之輔は、落語なんざ気楽にきくもので、やってるほうも適当に流してるんだから、いちいちメモなんかとらないで、という話を、まくら以前にふるのが、少なくともおれが居合わせた席では、毎回のお約束みたいになっている。
一之輔がやると、そんなにみんなメモをとるのか。
で、今日は、実際、浮世床を、適当に流しました、という体でやっていましたが、どうしてどうして。
姉川のくだりは、おれは、亡き志ん五が、これもはしょってやっていたのが印象にあって、妹は毛深いのか、というフレーズは耳に残ろ。
一之輔は、「ぼうぼう」と表現していたが。
戻す。
その、流す、やさぐれた手つき自体に芸があるので、もちろん一之輔の説教を言葉通りにとるわけにはいかないのだが、浮世床を、時間配分きにしながら流すという芸に乗るのは、参加するこちらも心地よい。
市馬師匠の厩火事は、対し、そりゃトリだから当たり前といえばそれまでだが、みっちり、シリアスな芸だった。
楷書。
酷薄な夫、わがままな妻を、くそリアリズム、と、すぐお下品な言い方をおれはする、言い直す、迫真の描写力で再現する。

ちょっと、この後は別途。


5時間後。酒がはいった。
以下簡単に。箇条書き。


◆寄席は娯楽かブンガクか。
 酒は涙か溜息か。


 おれはだいたい説教というものが大嫌いで、家にあっては親の言うことを聞かず、学校に行っては教師の言いつけを守らず、社会に出ては上役の命令を悉くやり過ごした、ことによって、今日の私があるのであります。
 京都にいた時分、神社仏閣にいくと、頼みもしないのに坊主がでてきて、利いた風なことをほざくのにはほんとに閉口した。


 こないだ、談志がついにとうとう仕舞いまでピンとこなかった、という話のついでで、ライバル円楽も実はちょっと、そのココロは、説教するからだ、と書いた。

 ここで、落語はブンガクか、の問いが出現する。
ブンガクだったら説教は、アリだ。
説教というのは、少し広義か。
書き口説く、とか、しみじみ、とか、幕末太陽伝のフランキー堺の背中に肺病やみの哀愁とか。
そういうの。


いま、活字のブンガクが全然ダメなので、昨日届いた岩波「図書」なんて、休刊しろよレベルだから、落語に気を吐いてもらわないと困る、という気持ちはあるが、ブンガクは必要なときとそうでないときがある。

ブンガクは、おれにとって必ずしも必須アミノ酸ではない。

が。

寄席とか落語は、ビタミンB群みたいなものだ。
たまに体内で合成しようと試みて、極まれに成功したという感触を得ることも、ごくまれに、あるが、錯覚か、やっぱりプロにくすぐってもらうほうが楽だ。

自分で自分に受けるのは、自分が自分の一番辛い批判者であることによって、難易度が高まる。
このブログを読んで面白いと思うのは読み返すのが少なくとも三日以上たってからなので、三日前の自分なんか、他人ですよ。
他人として面白いので、いま自分が自分を面白かったら君が悪いよ。じゃない、気味が悪いよ。


どうせ面白いなら、徹底的に意味とか、ブンガクとか、イズムとか、へちま、とかを排除したい。


おれが寄席に行く気分は、それだ。
花見で呆けるのに飽きて、別の対象で茫然自失したいからだ。


まあ、そうはいっても。


今日の市馬師匠は迫力あった。
おれの座った席にも原因がある。
落語かは、登場人物にあわせて、右向いたり左向いたりする。
で、おれの席は、師匠が右向くと、尾は左、ごめん、ではなくて、ばっちり俺とにらめっこになってしまうのだった。
今日の厩火事は、女房の伝法さを面白おかしくやるのではなく、シビアな夫婦喧嘩の調停に立ち会ったみたいな、なんか、陪審員になった、か、させられた、みたいな状況で、心の準備がないと、これは結構きつい。


で、一之輔の、これも説教だが、落語はヘラヘラ聞け、メモとるんじゃねえ、が、改めて沁みるのよ。


しかし、なんだ、ブンガクをやってくれたおかげで、おれもこうして減らず口が叩けるので、平素使ってない筋肉を鍛えるために、落語でブンガク、も、たまには、善哉。


全然箇条書きにならなかった、だらだら書いた。
言いたいことは以下。



そうだ、落語、やろう。