啓発舎

マジすか? マジすよ

先週から今週のあたまにかけて、行事てんこもりでありました。
金曜の晩は、拙宅で夜景をみながらワイングラスを傾ける、という設定が、お定まりの展開で沈没し、なりゆきで翌日に至り神保町駅まで客、といってもあの人だ、を送り解散、したその足で横浜に向かい、おやじ三人山下公園お散歩ベンチで缶ビール合唱つき、というパフォーマンスだ。
日曜は、会議。
週明け老母来襲。


金曜から土曜にかけてはなにかと差し障りもあるので、本日は日曜の会議をご紹介したい。


おやじの壊れる過程、その一部始終をまのあたりにした話。
主人公は、医学部教授、しかもそんじょそこらではない信濃町方面、にして、各種政府委員だのなんだの肩書てんこ盛りのじじいだ。
施設管理の諸問題、特に高齢者の処遇をめぐって、というまじめなテーマ。
議長は弁護士、女、年は30から50の間ぐらい。
必然、今回の主人公と議長・女・弁護士との壮絶なバトルへ発展する。


すこし話を端折った。
説明しよう。

弁護士・女・議長は、よくあるどSの自己責任論者。
ますぞえの元かあちゃんを想像すればだいたい合っている。
大先生は弱者は徹底的に保護。
真っ向対立、論点は明解。保護か、自立を促すか。

ところで両者の立ち位置だ。
かたや、おれは銀河系でいちばんエラい、
もう片方は、人類誕生以来最も優れた知性の持ち主よ私は、と、それぞれおそらく自任しているであろう仁。

おわかりいただけただろうか。
意見は対立、双方自分で自分がエラい人、これは破局まで行くしかない。
世界一の楯と矛の戦いだ。


で、大先生だ。
当初は、クールに持論を講義(職業柄どうしてもこの口調)していたが、あらゆる言葉尻に女・弁護士・議長が食らいつくので、次第に盛り上がる。
「ぼくは国土交通省も厚生労働も、みんな委員やったけどね」
「法律の専門家だかなんだか知らないが立場を楯にして自分の意見を押し切ろうというのはぼくは大嫌いです、みんなの意見をきいてください」
文脈からは、立場を楯に〜、は自己批判ではなく相手の女・弁護士を非難しているようだ。

で、みんなの意見を聞くと、状況は大先生に不利だ。
先生ますます盛り上がる。
「だいたい世の中はもののわかってない人がものごとを決めるからわるくなる」
「ぼくは、あと大蔵省もあれもこれも関わったけど」
と次第に得意の決め台詞の繰り返しになってくる。

結局流会、後日再度の果たし合い、ということになった。その間3時間。

おいらも一票を持つヒラの理事としてたまに意見を求められるので油断ならないところもあったのだが、赤勝て白勝てではぐらかし、観察者としての立場を守ったさ。

終了後、大方の参加者から、やれやれやっと終わったそれにしても横柄なじじい、および凶暴なばばあだったな、という表情を見てとったが、おいらは、いいものを見た、というすがすがしい気分であったよ。


結局、なんだ、人間として、というより生き物として正直、ということだ。
言ってる内容などどうでもいいが、「おれさま」としての在り方に、このじじいは混じり気がない。
人間という生き物は、おやじになると、みんなだいたいああでもないこーでもないになるが、こいつは稀有だ、そうならない。
人間以外の生き物は、基本、みんなおれさまですよ。
このじじいはソウリムシと一緒だ。褒めている。


だから、感情の発露が自然ですよ。
ええい、どいつもこいつも、という盛り上がり方が、当方の生理にしっくりくるのであった。

交響曲のコーダのようだ。
運命の終楽章のように、伽藍のようにそびえたつじじいの不機嫌。
ブロムシュテットがいたら、師匠弟子にしてください、と入門しそうだ。

これを鑑賞しないテは、ない。


ああ、私も、たった今このじじいでありたい、と熱烈に思う、ところまではいかないですけどね。
土台、貫目が足りませんよ、私なんて。おれさまの貫禄が。