啓発舎

マジすか? マジすよ

N響 アシュケナージのエルガー

◆第1786回 定期公演 Bプログラム
2014年6月18日(水)サントリーホール
シベリウス組曲「恋人」作品14
グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
エルガー交響曲 第1番 変イ長調 作品55
指揮:ウラディーミル・アシュケナージ
ピアノ:中野翔太


今季の定期のしめくくりを飾る素晴らしい演奏会だった。

アシュケナージは、2012年6月にシューマンの4番をやって、その時の弦のふくよかな響きが印象に残り、今回も楽しみにしていたのだが、前回のイメージを上回る、豊かな音の森に包まれた。


どんな強奏でも、音が溶け合う。まろやか。刺戟的な音が全然ない。

アシュケナージさんは、自分の音をもっていますね。
デュトワやチョンミュンフンには出せない豊かでふくよかな暖かい音。
アシュケナージさんその人、のような音。


エルガーは、いろいろ仕掛けの多い大曲だが、終始、このアシュケナージトーンで楽しませてくれた。
今夜は、それに尽きる。


グリーグのピアノの中野さんという人は、初めて聞く名前。
N響定期でやるのだから名のある人だと思うが、私の知識なんてこんなもんです。
で、予備知識なしだったのだが、澄明なグリーグだった。美しかった。
いつも聞くグリーグと別の曲みたいだった。

例えば一楽章のカデンツァ。
低音でガンガンやるところ。全く音が混濁しない。
混濁、というと語弊がある。低音ガンガンだと、当然音は干渉しあう。当たり前。悪い意味ではない。
それが、聴こえない。うならない。シャープ。

厳しい芸風の人ですね。
一見、どこにでもいる理系の院生みたいなご様子で、ピアノの弾き方も、あまり体を動かさず淡々としているのですが、聴こえる音は、強靭で、清澄で、デリケート。
耳が洗われるようだった。


今夜は満腹です。


今季は、これで終了。Bプロ、名演てんこ盛りでした。