◆角田房子氏の訃報に接する。謹んでご冥福をお祈りいたします。
角田さんといえば ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 だ。
いつでもすぐにとりだせるところにある。いま奥付を確認したら昭和60年2月25日発行、とある。新潮文庫。もちろん新刊で買ったから、かれこれ25年ずっと手許にあることになる。
後期ロマン派の音楽が、これでわかった。シェーンベルクに至る必然性は、この本読まないとわからないぞ。
世紀末の香り。洗練。爛熟。頽廃。極北。
19世紀末ウイーン。20世紀初頭パリ。16世紀後半京都。
その時、その場所、そして人。
◆隠者はめぐる 富岡多恵子
強靭な知性。
橘曙覧のくだりが白眉。
◆日本の禅語録二十 良寛
入矢義高
およそ良寛を語った著作で当方のもやもやが晴れた唯一の本。
良寛は、吉本隆明のアプローチもピンとこなかった。西行では、あれほど鱗が落ちまくったのに。
良寛はこの人、入矢さん。
入矢さんつながりでいうと、上田閑照の「非神秘主義」岩波現代文庫。「わが禅は座禅にあらず」という、入矢氏を追悼した一文。
座らず、文献から禅を極める、という凄いアプローチ。
◆ここまで書いたら、きのうのマツコ デラックスに触れないわけにはいかない。
ある種の潔癖さ。羞恥心。ストイシズム。なんか、痛々しくなるような。
笑う対象は、常に自分。他人を傷つけないぞ、という決意。
男なんだよ、女とゲイの違いは、自らを客観視できるかできないか。
女が、なんというか、いぎたなく見えるのは、だって私が私なんだもん、というところ。
ゲイに感じる違和感はそこだ。世界の中心で天下無敵になれない、そこに、男の根なし草としての存在がみえてしまうところだ。
女にあってゲイにないもの。醜悪さに無頓着であることに起因する強靭さ。