啓発舎

マジすか? マジすよ

東京堂の平積みをながめていたら、きのう書いた福田なんとかの相棒の坪内かんとか氏の新著、サインつき、があったので少し立ち読みした。
「20年以上にわたり書き継いだ、著者渾身の「論壇」論」だそうだが、要するに過去に諸君だか正論だかに書いたのの寄せ集め。ものは言いようだ。
だが、坪内祐三は、福田なんとかほどうすっぺらではない。
前半の人物評は、懐かしい名前が並ぶ。顔写真つき。
で、しょっぱなの福田恒存氏のところで、ふと思った。
顔と書くものが一致する人とそうでないのとがいるよな、ということ。
言うまでもなく、福田氏は、顔文一致のほう。
この人は、最近再放送でついついまた見てしまった七人の侍にでてくる宮口精二に、ほんとよく似ている。顔ももちろんだが、そのキャラクターが。
古武士。
あと、一致するのが江藤淳だ。
この人を評して番頭面といった女流、金井美恵子氏だったか、がいたが、言い得て妙だ。
小言幸兵衛か、主人の目をぬすんで道楽する番頭さんか。


言いたいのはこの先で、では一致しないのは誰か。
この本にあったのでは、三島由紀夫
野坂昭如が対談かなにかで、三島のボディービルは、人目につくところだけ鍛える、というような発言があて、笑った記憶がある。上半身のしかも前。
体はともかく、この人の顔は、おれは、まえからどうもピンとこなかった。
なんか不安定というか、大人の顔としてできあがっていないというか。美醜ではなく。
とぶが、顔文不一致のさいたるものはノーベル賞とりそこなった村上さんだ。
書いたもの、おれが読むのはほとんどエッセイだが、から浮かび上がるイメージは、少女漫画、或は宝塚の男役。
まさか村の青年団だとは思わない。
おれは村上ブンガクの本質は、おのれの実際の相貌と、あらまほしき顔面を、高須さんに頼らずイメージで埋める苦行にある、と、今決めた。


個人的にいちばんびっくりしたのは、40年ほどさかのぼる。
茗渓堂、という本屋が当時御茶ノ水の交差点のところ、いまはセコハンの楽器屋だ、にあって、そこのレジ横に平積みになっていた雑誌を手にとったことによる。
なんか、出版社の業界紙のようだ、買っちゃえ。
いまも覚えているのは巻頭の特集が、婦人雑誌新年号一気読み、みたいので、これがほんとに面白かった。
以後毎号、隔月刊ぐらいだっただろうか、しばらくつきあった。
本の雑誌」11号。
表紙は沢野ひとし画伯で、編集長の似顔絵とおぼしきものにキャプションが添えられている。
うろ覚えだが「おれ編集長38才酒ばかりのんでるの、女房子供あり、どうしたらいいの」みたいな。
そのイラストが、ちゃんとワニ目でめがね長髪の全共闘くずれの世のすね者みたいで、雑誌の中身とぱっちりシンクロしていた。
というわけで、おれは長いこと椎名誠は、そのイメージだった。
だから、はじめて著者近影みたいのをみたときは、ギャグだと思った、格闘技の名前の出てない選手あたりの写真を拝借した洒落だと。


椎名は、その外観と書くものが一致しだすころ、マッチョなことを言い出したあたりから面白くなくなった、この人が売れ出したころは、おいらはもうはなれていましたね。


今回は、しらふ、なかみは浅い、ふと思い出したこと、だがホントに思ったこと、状況はお気楽散歩、というような分類。

まあ、昔話。備忘録といったところ。
天下泰平なり。