<拾遺>
“散歩”スタイル変えなかったメッシ…世界一まであと1勝
東スポWeb 7月11日(金)6時7分配信
120分間の“散歩”を終えたメッシは、最後のひと蹴りにすべての思いを込めた。先攻のオランダはDFフラール(29)が失敗。失敗の連鎖が見られるPK戦だけに、背番号10にはさらにプレッシャーがかかった。異様な雰囲気の中でペナルティースポットに向かったメッシはオランダGKシレッセン(25)の動きに軽く目をやり、5歩の助走から左足一閃。ボールはゴール左に豪快に突き刺さり、勝利に向けて大きなアドバンテージを握った。
難しい試合だった。前日のブラジルの大敗は、確実にオランダとアルゼンチンの選手たちの動きを硬直化させた。一つのミスで惨劇を招いた試合の残像が、両チームから大胆なプレーを奪った。しかも、ブラジルの敗戦を悲しむかのような“涙雨”が選手の足元を不安定にさせた。
その中でメッシは、5バック気味に守るオランダから常に2人のマークを受けた。パスをもらっても前に進むことすらできず、選択肢は無難な横パスか、無謀なドリブルをカットされるかだけだった。好相性のMFディマリア(26)が故障で欠場したのも、攻撃面では大きく影響した。
それでも他の選手たちの頑張りでチームは耐えた。守備を免除されているメッシは前線で“散歩”を続けてチャンスを待った。多くの評論家から批判も受けてきたが、決勝進出がかかる一戦でもスタイルは変えなかった。大事なのは「勝ちたい」と思う気持ち。延長戦に入る前に円陣で猛ゲキを飛ばし、精神力の戦いを強調した。選手、サベラ監督(59)、スタッフ、チーム全員の思いはPK戦で見事に結実した。
過去のW杯で輝くことができなかったメッシだが、世界一まであと1勝。マラドーナ氏は1986年メキシコ大会で主将としてチームを優勝に導き、90年イタリア大会では決勝まで進みながら優勝を西ドイツにさらわれた。今回、メッシはようやくマラドーナ氏に肩を並べるチャンスがめぐってきた。ブラジルの敗退で大会のお祭りムードはしぼんだが、メッシが最後の最後に主役の座をつかむ。
メッシよ。
勝ち負けはどうでもいい。自分のスタイルを貫いてくれ。
歴史に残る散歩をみせてくれ。