啓発舎

マジすか? マジすよ

教養のころ、部室は学館の三階、というのは最上階です当時、の一番奥からひとつ手前にあった。隣のどんづまりはコテカンというサークルだ。

コテカンはもちろん略称で、正式には、えーとなんだっけ、こてこての関西弁をしゃべくる会、じゃったように思うがのう。もう40年前のことじゃ。


で、まあ、コテカン、こと古典音楽鑑賞会が最上階のどんづまりでおれらのオーケストラがその手前、という配置は、二大騒音発生源を隅に追いやる、という、当局の当然という他ない計らいによる。


ほんとは楽器は部屋を借りてやらないといけないきまりだが、そんなこと構う奴はいないので、おれらは昼間からぴーひゃらやっていたが、隣のコテカンも、負けじ、と、大音量でフルオケのレコードを流し、はりあっていた。


いやでも聞こえてくるので、知らず知らず耳を傾けることもあったが、悉く、古色蒼然のSP音質の音源で、あいつらマニアだからカラヤンなんか絶対かけませんから、退屈だった。

部室は狭いから、さすがに金管は吠えない、外でやる、部室のなかでぴーひゃらやるのは、もっぱら木管で、とくにクラのS君はいりびたりだった。
この人には凄い特技があって、キャッキャ、キャッキャ指慣らししていたかと思うと、突然吹くのをやめ、「今のはフルベン40年ムジークフェラインライブだ」とかつぶやくの。
となりのコテカンから聞こえてくる音源を当てるんですね。
曲名はもちろんみんな知ってるから略。
いつ振ったベト7か、というレベルで特定するわけよ。
45年産メドックどこそこの農園で、というかんじ。
ソムリエ真っ青だ。
コテカンのドアをコンコンして、いまのなんですか、と聞ける仲じゃないので、お互い、るせえな、という間柄ですから、それが正解か、命中かは、ついにわからずじまいであったが、彼がいうのだから間違いないだろう、とおれなんかは思っていた。


youtubeはりつけて、ブラ3の名盤はどうのこうの、とかぐだぐだいう奴が、クラシックブログ業界、には佃煮状態だ。
貼り付けすぎでやたらに重たいから滅多に立ち寄らないが、やっぱりそういう技をもっていらっしゃるのであろうか。
なんかご利益があるんだろうか。


たまたまその種のブログに出くわして、ふと、S君を思い出しただけ。
指の回る仁だった。音はキャッキャでした。