啓発舎

マジすか? マジすよ

まずは。ブログの引用。

担々麺実食記。


待っている間に「胡麻すりセット」がやってきて、心静かに胡麻を擦り擦りして精神統一しながら香りを楽しむことができました。

 よくある食レポものではない。アメリカ事情を的確に伝えていただけるので重宝しているブログ筆者の余技みたいなのの、抜粋。

 

胡麻すりすりセットが「やってきて」

に、主宰が思わず反応してしまった次第。

ちょっと長くなるかもしれない。

三島の「文章読本」は主宰の一軍書棚にいまでもある。

三島の評論、エッセイは、全部いいが、これもそのひとつ。

鴎外の文章を褒めるところで以下の引用がある。

 

「水がきた」

 

寒山拾得の一節。

旅の僧が、閭という高級官僚の頭痛を治療するために、水を所望する。

で、

閭は小女を呼んで、汲みたての水を鉢に入れて来いと命じた。水が来た。僧はそれを受け取って、胸に捧げて、じっと閭を見つめた。

 三島は、自分だったらくどくど説明するところ、「水が来た」の一語ですます鴎外のセンスにしきりに感心していた。

と記憶する。

 

おれは、むしろ、その前の一節、僧の申し出をうける閭の心理解剖をくどくどやって、「ちょうど東京で高等官連中が紅療治や気合術に依頼するのと同じことである。」などと減らず口をならべる鴎外のいつもの「ドーダ節」に辟易しましたけど、ね。

戻す。

「水が来た」の表現自体は、おれもカッコいいと思う。

ところで、冒頭の引用は、それに匹敵するのではないか。

再掲する。

胡麻すりセットがやってきた

店員が、すり鉢に白胡麻をいれ擦り棒を添えた「胡麻すりセット」をまず席に持ってきてくれます。客が自分で加減しながら胡麻をいれるという趣向です、云々。

と、凡庸な書き手はくどくどやるところを、一言「胡麻すりセットがやってきて」と、夾雑物をはさまず前進する。

久々に、文章を読んで爽快感を覚えた。

この方、アメリカ政界事情をレポートするというお仕事柄、トランプを俎上にあげることが多いが、凡百の語り口と違い、品位があるから、読んでいて疲れない。

 

褒める。