啓発舎

マジすか? マジすよ

永井荷風の貫禄

たまたま江藤淳氏の「荷風散策」を拾い読みしていたら、断腸亭日乗からの抜書きで、うなるものがあった。孫引きになるが、以下採録します。

「・・・・・・谷中氏に逢ふ。同氏のはなしにこの日の午後文士高見順踊子ニ三人を伴ひオペラ館客席に来れるを見たり。原稿紙を風呂敷にも包まず手に持ち芝居を見ながらその原稿を訂正する態度実に驚入りたりと云ふ。嘗て三上於菟吉といふ文士神楽坂の待合にて芸者に酌をさせながら原稿をかきこの一枚が十円ヅツだから会計は心配するなと豪語せしはなしと好一対の愚談なり」(昭和十五年二月十六日)

 好一対ということばは、こう遣うのか。

 かっこいい。

 冷笑するにも文章の技が必要なんですね。
 とても当方の及ぶところではない。

 不用意なあてこすりは下品なだけ、と、わが身を振り返り、反省。