いささか旧聞に属するが、日経の文化往来(4月19日付け)で、演奏会の紹介記事があった。
ベートーベン協奏曲全曲演奏会
ピアノ協奏曲5曲を一日がかりでやる、と。
すげえ企画。
今回の独奏者については、当人目当てで演奏会にいったことはないが、学生の頃、部室でぼーっとしていると、友人から、今日都合で行けないんだけど、と、在京オーケストラの定期公演の切符を譲られることがよくあり、暇だし、上野は近いし、只だし、という理由だけで演奏会に行くことがあり、二曲目の合わせもので、この人に、なんというか、出くわすことはたまにあった。
当方、どういうわけか、この人の出す音に接すると、親戚のいちばんおっかないおばさんの逆鱗に触れてしまったような気分になった。
いま、しみじみ思ったが、コンサートは、感動、喜び、悲しみ、希望、勇気、など、色々な感興を聞く人に与えるものだが、「叱られる」という気分になる、という体験は、めずらしいな。他人事のようだが。
この人以外で、そういう経験はないなあ。
ふつう、ないよな。
ユニークな、貴重な資質だと思います。
音楽、というか音の塊、は、人を叱咤することすら、できる。
もちろん叱られる原因はわからないが、当方、胸に手を当てれば、いくらでも思い当たる。
で、頭を垂れて嵐が過ぎるのを待ち、さあ、気を取り直して、メインのプログラムをと期待すると、これが見事にスカだったりして、泣きっ面に蜂状態、なんだかしらないが日頃の行いを反省して、トホホ気分で上野の坂をとぼとぼ帰っていった記憶もありますね。
指揮者はこの種の企画が好きな人。
以前、渋谷の文化村で、ヴィルトオーソオーケストラとかいう凄いネーミングのオーケストラを臨時に編成して、悲愴かなんかをやったことがあって、行ったことがある。これは最近だ、といっても6〜7年まえですかね。
旦那つき(IT関連企業だったか)コンサートの常で只券が出回り、むろんそれを入手したからだ。
感想は、ない。
その場に居合わせたことは記憶にあるが、演奏会がどうだったかは、覚えていない。スカだったという記憶すら、ない。
まあ、そういう指揮者。
という訳で、どういうコンサートになるか、興味津々です。
でも、ひとつだけ、気がかりなことがある。
なんでも、指揮者は、「最大の課題が集中力の持続」で、その観点で今回の独奏者に「白羽の矢を立てた」とのこと。
独奏者は、まったく心配いらない。タフさ、という点に限れば極めて適切な人選といえよう。
客も、好きでいくんだろうから、どうなろうと知ったことじゃない。(客層には、すこし興味がある)。
当方が気をもむのは、5曲も付き合う都響のメンバーの心のケアだ。
老婆心ながら、カウンセラーをはりつけたほうが、よくはないか。
余計なお世話か。