啓発舎

マジすか? マジすよ

曲名 ソナチネ
作曲者 モーリス・ラヴェル
演奏者 マルタ・アルヘリチ

 待望の秋です。戸外では虫がすだいています。

 硬質、均衡、典雅、疾走感、清冽、ゆらぎ、蒸留水、エスプリ、閃光、都雅、冷たい炎。
 乏しい語彙から、ざっと、今思いついた言葉を書き連ねた。

 身体が、そういう栄養を求めるときがある、ちょうど今夜のように。

 そういうときは、アルヘリチのラヴェルです。アルゲリッチという読み方はどうなのかしら。
 実は、この人のピアノを聴くのは本当に久しぶり。古い友達に遭ったようだ。昔と全然変わらないね(録音だからあたりまえ)。

 ラヴェルで一曲あげろ、といわれたらこの曲。
 奏者は、断然この人。

 新譜で出たときに買った。75年。高2か。帯に「ラヴェルが青く燃える」(だったと思う)というコピーが書かれていて、とかくださくなりがちなクラシックの惹句としては秀逸、と思った記憶がある。
 眩暈のするような美しさ。一目ぼれ。ジャケットのアルヘリチさまも、いいかんじでした。75年ですから。もう30年経つのですね。あの清冽な感動から。
 時を経て熟成する記憶もあるが、当初接したときの感性がそのままということもある。この曲、この演奏については後者。いつでも、みずみずしい五感の喜びが甦る。

 もう、30年のおつきあいになるのですね。
 ラヴェルは、全部が全部というわけにはいかないけれど、時に、はっとする作品がある。マ・メール・ロワとか、弦楽四重奏曲とか、この曲とか。
 
 また、若いアルヘリチ様の、感性、硬質なゆらぎの感覚と、この理性の作曲家との、空豆とビールのような絶妙な相性。

 これも、生きてて良かった級です。