プレミアムシネマ「東京暮色 デジタル修復版」<スタンダードサイズ>
日本を代表する小津安二郎監督が、父と2人の娘、そして、父を裏切って家出した母との複雑な関係を鮮烈なモノクロ映像で描くヒューマンドラマ。デジタル修復版での放送。
出演
原節子,有馬稲子,笠智衆,山田五十鈴,高橋貞二,田浦正巳
脚本
小津安二郎,野田高梧
監督
小津安二郎
おれが学生のころ、小津のブームが始まった。
火付け役は、ドナルドなんとかという外人の評伝だったと思う。
読んだ。わびさびワンダフル、いつものやつだ、という印象しかのこっていない。
映画も何本か見た。
もちろん、全然面白くなく、若造だからしかたないな、おとなになればわかるだろう、と当時は謙虚に受け止めていた。
時は流れ長ずるに及び、今日改めて見ると。
まともに向き合うこと能わず、後半は消音してやりすごし候。
おとなになって、わかった。
こいつは、ほんとにダメ。
小津には、ハスミという応援団がいる。
おれの小津ダメ評価には、こいつの存在が大きい。
坊主にくけりゃ袈裟まで憎いわけです。
この場合ハスミが坊主で小津が袈裟なので、小津にはお気の毒だ。
ハスミはいつもどおり牽強付会、贔屓の引き倒しに終始する。
こいつの「表層批評」の餌食に小津がなって、いいように玩具にされたのだね。
消音して見ると、役者がみんなして操り人形なのがよくわかる。
そこがいいんじゃねえか、と頭でっかちハスミ節すりこみのブンガクバカはほざく。
どさくさで書くが、そのあと起こったおフランスブームは、ポストモダンだのなんだのかんだのは、誰が責任とるか、幕引きするか。
全部与太です、うそっぱちです、と。
いまラストにさしかかって、原節子と山田五十鈴がにらみあい、しない映像では、例の手法でたんびにクローズアップのいれかわりだから、だが設定では対峙の状況で、原節子のゲタ面は迫力あるぞ。
ゲタ面女優は、ジョーンクロフォードも、ケイリーグラントとからんだやつも、岸恵子、も凄い面魂だが、やっぱりチャンピオンはほの人をおいてない、としみじみ思う飽きの午後。
株は、小康状態なり。