起きた。
さすがに、すこし朦朧としている。
さっき結果をみたが、おれの予想は、いい線いっていたな。
優勝を当てたのは、別に偉くもなんともなくて、あの演奏を聴けば誰でもわかる。
文句なし。
それ以外は、ちょっと意外なのもあった。
音楽コンクールを、予選から、画像であるにしろ、会場ではないにしろ、見続ける、というのは初めての体験だ。
壮挙、といえよう。
こういうことは、ひまじじいにしかできない。
外観は、毎晩明け方近くまでなんか難行苦行みたいだが、とんでもない。
純粋愉悦、夢見心地でありました。
圧巻は最終審査。
1番を10回近く、2番も3回か、同じ曲、しかも長尺をこれほど繰り返し聴くことも、滅多にない、と書いてみたが、滅多にどころか初めてだろ。
全然飽きない。
奏者によって、まるで違う。
個別になるときりがないので、以下、おおざっぱに区分してみた。
ラテン
優等生
達者
弟子筋
意外な入賞者は、全部審査員の弟子だった。
ポーランドとカナダ東洋系の若いほう。
ポーランドは、コンチェルトを聞く限り凡庸としかいえない内容だった、と俺には感じられたが、これが、なんと、審査委員長の、委員長の弟子。
カナダのぼくちゃんは団体損、じゃない、ダンタイソンの生徒さんです。
だからどう、とはいわないが。
優勝者も団体損、じゃない、ダンタイソンの弟子だから、こっちは、誰が見ても、じゃない、聞いてもぶっちぎりだから、セロニアスモンクなしだから弟子だからどうのこうの、ということは言えないが。
反田も、師匠は審査員でしたね、だからどうとはいえないが。
優等生は、Gadjievと反田。
優等生、ということばでわかるとおり、おれには面白くない。
これは私の、しかし、主観です、演奏の価値とは、ひとまず違うものさし。
ラテンはその逆。
どうもおれはラテンに弱い。
今回入賞したイタリアのお姐さんは、体形からして、ぐっとくるものがあった。
おでぶちゃんは得ですよ。じじいは、大概おっかさんタイプに弱い。
歌ってました。それに尽きる。
スペインの兄ちゃんは、コンチェルト賞もとったが、ご同慶です。
ショパンはたちの作品ですから、こういう、底抜けの愉悦は、なんか、救われるかんじがする。雲間から太陽がのぞく、みたいな感覚だった、見続けていて。
達者は、東洋系の総称。
優勝者のカナダの高杉晋作似は、達者でありながら、うるおいもある、響きの美しい、音をもっている。
おフランス系も聞きたくなる。こいつは、おれは褒める。
それ以外は、特に17歳の団体損のぼくちゃんなんか、音符をきちんと拾いました、起立礼解散、というかんじだったよ、おれには。
韓国の2番のコンチェルトは、そこへいくと、一日の長というか、しなやかな音の流れがあって、おれには好感がもてた。こいつは入賞してもよかったと思う。こいつも、これから伸びるんじゃないか。
で、小林さん。
今回、おれが一番がガツンときたのは、後頭部直撃、だったのは、このひとの24の前奏曲だった。
ショパンとおててつないで深淵に沈潜する。
道行のような。
小林さんと無理心中みたいな。
ちょっと言い過ぎか。
ともあれ。
小林さん以外の全選手とただひとり対峙する小柄なジャパニーズ少女。
というイメージで、今回のコンクールは、ありました、私にとって。
はっきり言って、コンチェルトはお通夜みたいだった。普通に聞くと。
音は蒸留水のように美しい。
音の連なりが、月並みだが、小粒の真珠をならべたみたい。
相互に干渉しない。
そして、常に、悲しい、というのとも違う、沈潜、のほうが適切だ、に向かう。
これが審査員にプラスに評価だれるか、どうか、というのが、きのう寝るときのおれの唯一のひっかかりどころだったのだ。
入賞して、よかったです。
順位も納得。このひとに上位は似合わない。
技術も音楽性も満点だが、このひとが生来備えている感受性、個性そのものが、大向こうに受ける資質であるかどうか。
たとえば、だから、おれみたいなのを惹きつけるようでは、一般の集客は、どうか。
おれに入会を認めるクラブには、おれもはいりたくない。
ちょっと鉱脈をみつけた気分。
24プレリュードの動画は、どうだろう、中三日ぐらいで再生しそうだ。
とっちらかったが、そんなとこ。