昼下がりいつものカフェでぼーっとしていて、ふと我に返ると、左はす向かいのついたての奥に、仕事で知った顔ががいるのに気づいた。
同僚だろうか、少し年かさのおやじと一台の端末をのぞき込んで、話し込んでいる。
よくある景色。
ところで、そいつの陣地は横浜だ。
なぜ、昼間に番町くんだりでPCをのぞき込んでいるのか。
近く会うことになってはいるが時期は未定おそらく桜の後だ。
おれがらみとは考えづらい。
先方もこちらにきづいていない様子。
知らんぷりを決め込む。
が、当方がそっちを視認した以上、相手もこっちを認識するのは時間の問題だ。
案の定、寝たふりしてたら、あの、とか声をかけられてしまった。
たまたま近くで用事があって、だのなんだのあって、上司を紹介します、と。
おやじ、当方の席までやってきて、や、どうもどうも、と名刺を、おれは明らかに配る目的がない限り携行しないので一方的にもらうのであるが、みたら社長だった。
例の件で、いやよろしく、そろそろ近々、と型どおりやりとりして、では、と先方が席を立つ。
一挙に、籠城モードから、ヒトヒトヒト次元に。
主宰の裡の鏡のようであった湖面が、さんざんゴジラが暴れまわったあと、みたいな、去年の台風のどまんなかみたいな、様子に一変する。
おさまらないので、徒歩より、ではないか、チャリより帰宅した。
知人とばったり、というのはずいぶん久しぶりだ。
不用意に出くわすと、どれだけ湖面が荒らされるか、新鮮な驚きであったよ。
ヒトといういきもの が、如何においらの日常の秩序を害するか。
今回の相手に悪意は、おそらく、まったく、ない。
にしても。
そこで明らかになるのは、平素が、いかに安寧であるか、ということであります。
帰ってしみじみ甘いもの食いながら身に沁みたよ。
明日は明日で昼飯食う用事があるが、これは予めヒトしかも仕事次元に自分を調整して臨めるので、衝撃波は回避し得る。
ヒトヒト環境から足を洗ってかれこれ7年。
更にこの城郭に籠城して早5年。
行方に広がる時空。
軽安なり。