だいぶ静かになりました。
手前の芝生の広々とした冬枯れの様子は、先週おなじアングルで撮ったら主役は人人人、諸国民族の祭典状態でありました。
こっそり教えるが、ここから英国大使館に抜ける道が、桜は一番美しい。
千鳥ヶ淵のソメイヨシノ一色もいいけれど、この通りの紅枝垂れから早咲きの白い桜まで、微妙な色合いの、揺れ、を体感すると、心が震えますよ。
こう毎日、日本という国と対話していると、どうしても、言葉、に思いがいくことをまぬかれない。
なにか、この美しさを言葉にしようと思うと、なにをいっても空疎になってしまう。
胸をかきむしられるような、とか、めまい、とか、浮かぶのだが、さすがに、ねえ。
そこへいくとやっぱり西行さんは偉い。
◇春風の 花を散らすと 見る夢は さめても胸の さわぐなりけり
胸騒ぎが消えず、起き抜けに逢いに行くのであるが、まのあたりにしても、なお胸のふるえは消えない。
現にこうして眺めていても。
時の移ろいが現前にある。それに心が震えているのか。時間を具象化しているような、と言ってみても思いは掌からこぼれる。
◇風さそふ 花のゆくへは 知らねども 惜しむ心は 身にとまりけり
◇散る花を 惜しむ心や とどまりて また来ん春の たねになるべき
花の散る、めまいがするような、あの感覚ですね。
また一年経つのだな。
◇雲にまがふ 花の下にて ながむれば 朧に月は 見ゆるなりける
これは実景ではない、と思う。
それにしても、雲かとも思う花のおぼろな姿、それに月、これは満月ではない、糸のような細い三日月、をあしらう、かそけき光の中のおぼろな桜の質感。
大気。
◇今よりは 花見ん人に 伝へおかん 世を遁れつつ 山に住まへと
究極の美をまえにして、すこしは心を澄ませよ、と。
この歌は羽田空港の到着ロビーに貼りだそう。
明日は、成り行きです。