啓発舎

マジすか? マジすよ

楽器選び

◆しかし、文化の日はすごい、きのうまで雨模様だったのに、文字通り雲ひとつない晴天。一年でいちばんよい季節がこれからしばらく続く。
◆渋谷へ。昔全線座があったあたりの楽器屋さんでチェロ。一番高い楽器とその他これは、というのを見つくろってもらい試奏室で気が付いたら1時間以上弾かせてもらった。ほっといてくれた、ということだ。これはたいへん貴重な体験だった。
 とっかえひっかえすると、楽器の個性がたいへんよくわかってくる。人間の感覚、というかこの場合当方個人の感覚だが、結構いいかげんで、Aという楽器を弾いた印象は、Bを弾くことによって相対化されるが、またAを弾くとまるで違った印象を受ける。でCを弾きAを弾くと更に・・・ということできりがない。
 ところが、これを繰り返し、ABCの楽器を互い違いに弾いていると、楽器に対する感覚は収斂してくる。
 Aは、一見弾きやすく派手に鳴るようだが、かわいた、あっけらかんとしたドライな音色の楽器。
 Bはしめった、こもった音色の楽器。
 Cは、高音域が、なんというか、電気的にエコーをかけたような、やわらかくしっとり落ち着いた音色、しかし、低音域は硬い印象の楽器。

 店が最初に勧めたのは実はBだった。クレモナの若手の作。160万円だよ。
 次がA。これは中国で82万円。店専属のチェロの先生の一押しだ、と。
 Cが、この店一番の、クレモナのマエストロの作品。

 結論Cがいちばんよかったのは順当だが、弾き比べると、クレモナのBが明らかにAより劣る。
 店の人が、楽器の印象を聞くので正直にその旨伝えたら、たいへん親身に聞いてくれた。

 とっかえひっかえ弾いてBの印象が特定したので、最初に弾いたBの感触は決して悪いものではなかった。

 なかなかたいへんな世界だ。

 楽器の性格は一本一本違うし、おそらく、同じ作者でも違う(同じ作者の複数の楽器を弾いたことがないからよくわからないが)。
 最後に、作って結構時間がたっている楽器も弾かせてもらったが、時間が経った音、という感じはしたが、やはりその楽器の個性はあって、それは当方に芳しくないものだった。
 時間が経てばよくなるという要素も確かにあることはあるのだけれど、その楽器の個性というのは新品の段階であるていど特定できるのではないかしら。

 本気で選ぶのだったら、時間をかけて自分の物差しを作る、ということをしたほうが、いい。
 よく、先生に選んでもらうのは善し悪しだというが、それは真理だと思う。
 自分の感性が結局は頼りだ。