啓発舎

マジすか? マジすよ

一握の塵

書名 一握の塵
著者 イーヴリン・ウォー
出版社 彩流社

 イーヴリン・ウォーの翻訳は、ほとんど、ほんとうは全てといいたいけれど、読んでいると思います。
 まだ翻訳がでていない時分、ペンギンの原書を買ってきて、Decline and Fallを読んだこともありました。

 なんといっても、文章家です。翻訳で読んで文章家というのもなんですが、どなたの翻訳でも、日本語として、いい。
 特に会話。
 デイヴィッド・ロッジというイギリスの小説家、批評家の「小説の技巧」白水社(訳 あの柴田元幸)という小説の技術について書いた本があって、書き出し、とか、意識の流れ、とか、項目別に、実際の作品を引用した語っているのですが(面白い!)、その「会話」というテーマで、この小説の一部分、電話での会話を引用しています。
 イギリス、ブルジョアカトリック、風刺、というあたりが、この人を語るとき、必ずでてくる決り文句ですが、私は、この人、文章と、あと、思い切って言うと、「雅」の香りがするんですね。
 映画でいうと、ゴスフォード・パークロバート・アルトマン監督)。ヘレン・ミレン最高でしたね。
 そういえば、この映画でも、「黒いいたずら」にあった、アフリカの軍隊に靴を売るエピソードが借用されていたように思います、これは、私の知る限り、誰も指摘していないように思いますが。
 「ブライヅヘッドふたたび」が、代表作として言われることが多いのですが、私は、この作品は、ウォーらしくもなく感傷を抑制できていないところのあるメロドラマだと思います。